彼女ともつ鍋を食べに行ったのが金曜日、一昨日と昨日の土日は家族といっしょに時間を過ごした。
俺には妻との間に小学生になる男児が二人いて、買い物や外食のほか子供のリクエストに応じて映画も観に行った。家族と時間を過ごす間はごくふつうの旦那であり父だ。結婚してからは土日の夜は妻と交わることが当たり前になっているし、疲れていなければ妻の欲求に応じたり、俺から求めて平日だって交わる。
夫婦仲は至って良好。
同僚たちの話を聞くかぎり、三五歳くらいからは求められても応じられなかったり、その気はあってもダメだという人が多いらしく、四五歳になってもまだ元気な俺はよく羨ましがられもする。
「おはようございます、金曜日はごちそうさまでした」
俺より早く会社に来ていた彼女は、俺を見つけるなり近寄ってきてもつ鍋のお礼をしてきた。
「おはよう、俺なんかと鍋を突いていやじゃなかった?」
恋人同士や夫婦など家族ならばいっしょに鍋を突くのも平気だろうけど、はじめて二人きりで行った食事が鍋というのが気になっていたのだが、当日は彼女に聞くタイミングを失っていてので朝一番で聞いたみた。
「全然大丈夫です。もつ鍋はわたしの方からお誘いしましたし。ひょっとしたら同じ鍋を突くのはいやでした?」
「いやいや、俺は平気だけど、俺みたいなのとじゃちょっと気になったりしなかったかなと思ってさ」
彼女は小声で、
「会社のほかの男性とだったらちょっと無理ですけど……」
「だったら良いんだけど、お鍋を前に出された時にちょっと気になったからね」
また彼女は小声で、
「〝あなた〟とだったらわたしは全然平気、というかまたいっしょに行きたいです、連れて行ってください」
「いいんだけど……、もっと年齢の近い人と行く方が楽しいと思うけど……」
「会社では話せないことももっといっぱいお話ししたいし、わたしのことをもっと知ってほしいし、〝あなた〟のことももっと知りたいから……。だからまた連れて行ってください」
そう言うと彼女は自分のデスクへと歩いていった。
俺のことを〝あなた〟と呼んだ彼女。先輩の男性社員のことをあなたとはふつうは呼ばないよな。
彼女とベッドの中で抱き合い〝あなた〟と呼ばれている場面を朝から妄想してしまった。