「あの、今テレビで見たのですけど……」
彼女はニコニコしながら休憩所に入ってきて、
俺が座る横長のソファに並ぶように腰かけた。
「テレビ?」
「はい、今お弁当を食べながらテレビを見ていたのですけど、特集で人気のお店をしていたんですよ」
「フレンチとかイタリアン?」
「いえ、もつ鍋のお店なんですけど」
「もつ鍋?」
「もつ鍋は苦手ですか?」
「いいや、平気だよ」
「テレビではランチを取り上げていたのですけど、いっしょにお弁当を食べていた人たちが、ランチではなくもつ鍋が美味しいって言っていたから、行ってみたいなと思って……」
「もつ鍋か……」
「あの、連れて行ってください」
「うん、もちろん!」
「やったー!」
彼女は俺の返事に破顔一笑の表情とともに、右手を強く握りしめていた。
周りの数人の同僚たちは俺と彼女のやり取りに聞き耳を立てていたようで、不思議そうな顔をしていた。
彼女は二五歳、俺は四五歳。
そりゃあ二〇歳も年が離れているのだから当然ですね。