お知らせ

小説「意気地無しなばかりに」は「小説家になろう」に投稿していて、当ブログへは遅れて掲載します。

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「お昼ごはん? もう少しいいもの食べようよ」

 コンビニから出てきた後輩社員に声をかけた。

「はあ……」

「どうしたの? 元気ないね」

 いつもは元気いっぱいな彼女が妙に暗い顔をしている。

「はい、ちょっと、いろいろあって……」

「元気を取り戻しに、今度何か食べに行こうか?」

「えっ? 本当ですか?」

「うん、俺も君には助けられたことがあるし」

 俺がミスしたとき、彼女は俺を励ましにきたことがある。

 俺の言葉に握りこぶしを作って笑顔になる彼女。

 今日はそれ以上話をせず彼女は会社へ、俺は駐車場へ向かった。

 今まで女性を食事に誘う時は、清水きよみずの舞台から飛び降りるつもりで決心してから話していたのに、今日はごく普通に話せたのが不思議だった。

 大人の恋愛が始まる。

 そんな気がするのではなく、そうなってほしいと俺は願っていた。

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