お知らせ

小説「意気地無しなばかりに」は「小説家になろう」に投稿していて、当ブログへは遅れて掲載します。

始まる 15

始まる

 なおこは一日に五通ほどのメッセージを送ってくるようになった。

 高校生のころ、別の女子に告られてファストフード店に行った場面をなおこに見られてしまい、なおことの交際は短期間で終わった。告ってきた女子とも数回ファストフード店に通っただけで終わっていた。

 なおこはなぜ今さらオレに近付こうとしているのかが理解できない。高校生の時は人間としてあり得ないとまで言われてお別れし、腕組の場面を目撃した時も、同じような感情を抱いたからせつこに連絡したんじゃないのかな。なのに俺に近付いてくるって……。

 数カ月前の俺ならば、絶好のチャンスだと思って俺の方からアプローチを仕掛けたかもしれないが、今の俺はよその女性と関係を持つことで、今の生活が崩れることの方が恐ろしい。だから返信も一、二通だけにしている。

 会社の同僚女性との時もそうだが、迫られてイヤだと思う男はいない。実際のところ同僚女性とはいい関係になれればと思う部分もあった。でも迫ってくる頻度が多くなってくると怖くなり、防御しなきゃと思ってしまう。騙されているのではないかと勘ぐってしまうのです。ただ悲しいことに、正常な思考を持ち合わせながらもその裏側では正反対のことを考えてしまい、俺の男の部分が先走りそうになる。

 ただ、なおこは仕事をしているし、妻は午前中にパートに出ているだけで他の時間帯はずっと家にいる。俺も〝浮気疑惑〟以降は会社帰りに飲みに行くこともなくなり、浮気するような時間が今はない。だからこれ以上なおことの関係が深まることはないと思っていた。

 

「じゃあ、行ってくるね」

「うん、気を付けて」

 妻は子供を連れて入院している義父のお見舞いを兼ねて、一泊だけだが実家でくつろいでくる。なおこには妻が家を空けることなんて伝えていないし、伝える気もない。ただのんびりと俺は一人でくつろごうと考えていたのだが……。

タイトルとURLをコピーしました