お知らせ

小説「意気地無しなばかりに」は「小説家になろう」に投稿していて、当ブログへは遅れて掲載します。

始まる 8

始まる

 彼女は宣言したとおり、手が空くと俺のデスクにやってきては隣の椅子に腰かけて話をしてくる。

 仕事の話がほとんどなので俺もごく普通に喋ることができるし、軽い冗談を言ってきたりもするので、やはり俺は話しやすい男性の先輩とだけ見ているのだろうな。

 そう思うと月曜日の朝に一瞬だけだが、彼女とのことを妄想した自分が恥ずかしい。大人の恋愛になんて繋げられないのだから、妻には内緒の息抜きの時間を過ごせればそれでいい。

 だが目をじっと見ながら小声で〝あなた〟と呼んできたり、

「ね、今度あの店に連れて行ってほしいな♪」

 そう言いながら後ろに手を組み俺の前で軽くジャンプをする、まるで少女のような仕草をしながら隣に座ってくることがある。そういう態度はやめてくれ、俺という男は女の子にそういう態度をされると頭の中の回路が混線してしまい、すぐに違う方向へ思考が暴走を始めてしまう。

〝あなた〟と呼ぶときは悪女、少女のような仕草の時は少女。まるでその二面性をうまく使いこなして、俺をもてあそんでいるようにも思える。

 彼女のこの二面性に負けたら俺はどうなっていくのかな……。

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