お知らせ

小説「意気地無しなばかりに」は「小説家になろう」に投稿していて、当ブログへは遅れて掲載します。

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 彼女が行きたがっていた店は、会社からだと電車で数駅移動した所にある。

 同僚の目もあるし二人別々に会社を出て電車に乗り、俺はその駅周辺の土地勘がないので、改札を出たところで待ち合わせて二人で店に向かった。

 金曜日の夜だから店は満席で、座敷ではなくカウンターに横並びで座った。

「何か飲むの?」

「わたしお酒は本当に弱くて、すぐ顔に出ちゃうし…」

「そうなんだね、無理して飲む必要もないよ」

「お酒はよく飲まれるのですか?」

「俺も普段はほとんど飲まないよ、付き合いで飲む程度かな」

 二人はウーロン茶で乾杯した。

 しばらくするとカセットコンロと土鍋に入ったもつ鍋が運ばれてきた。

 今の瞬間まで気にも留めなかったのだが、初めて二人きりで会って鍋なんてイヤじゃないのかな。

 でも鍋を二人で突いていると少しずつお互いのガードが下がり、これまで話したことがないことをお互いに口にしだした。

 ただ残念なことにアルコールの力を借りることはできないが。

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