「お昼ごはん? もう少しいいもの食べようよ」
コンビニから出てきた後輩社員に声をかけた。
「はあ……」
「どうしたの? 元気ないね」
いつもは元気いっぱいな彼女が妙に暗い顔をしている。
「はい、ちょっと、いろいろあって……」
「元気を取り戻しに、今度何か食べに行こうか?」
「えっ? 本当ですか?」
「うん、俺も君には助けられたことがあるし」
俺がミスしたとき、彼女は俺を励ましにきたことがある。
俺の言葉に握りこぶしを作って笑顔になる彼女。
今日はそれ以上話をせず彼女は会社へ、俺は駐車場へ向かった。
今まで女性を食事に誘う時は、清水の舞台から飛び降りるつもりで決心してから話していたのに、今日はごく普通に話せたのが不思議だった。
大人の恋愛が始まる。
そんな気がするのではなく、そうなってほしいと俺は願っていた。