冬のオートバイ
一時間ほど走っただろうか
指先の感覚がなくなり
道端の数台の自販機が並ぶ前に
オートバイを止めた
「あたたかい」の文字に引き寄せられ
ウエストバッグに無造作に入れた小銭を出そう
かじかんだ指先で何とかファスナーを開ける
小銭を入れるのも一苦労
出てきた缶を両手の掌で転がすように持ち
開ける前にまず手を温める
かじかんだ指先が少しだけ動かせるようになり
缶を開けて口へと運ぶ
でもエンジンを止めたオートバイは急かすように
チチチと泣き続ける
冬ならではの
幸せを感じる